EXPENSE
経費性の考え方
経費性とは、単なる形式や名目によって決まるものではありません。
法人税において、経費として認められるかどうかは、
その支出が事業にどのように関わっているか、
すなわち、業務付随性(事業との関連性・必要性・目的)を踏まえた「実体」に基づいて判断されます。
租税法律主義という前提
課税および経費の否認は、法律に基づいて行われなければなりません。
これは憲法第84条に定められている
「租税法律主義」によるものです。
課税要件および課税標準は、
国会が制定した法律によってのみ定められ、
法律に基づかない課税や否認は許されません。
公務員は憲法に拘束される
税務署職員を含む公務員は、
憲法および法律に拘束されて職務を行う義務があります。
憲法第14条「法の下の平等」は行政機関にも直接適用され、
恣意的な判断や不平等な取扱いを禁止しています。
したがって、
- 法律に基づかない経費否認
- 納税者ごとに異なる基準による判断
- 根拠の不明確な否認
は、いずれも許されません。
法人税法22条の位置づけ
法人税法第22条は、
所得を「益金-損金」で計算する構造を定めた規定です。
しかしこの条文は、あくまで計算構造を示すものであり、
個別の支出を経費として否認する根拠にはなりません。
したがって、
22条のみを根拠として経費を否認することはできません。
業務付随性という判断基準
経費性の判断において中心となるのが「業務付随性」です。
支出が経費として認められるためには、
- 法人の事業遂行を目的とする支出であること
- 通常の事業活動として必要なものであること
- 収益獲得活動と関連していること
といった観点から、
個別具体的な事実関係に基づき判断されます。
個別条文・判例による制限
一方で、
- 役員給与(法人税法34条)
- 寄附金(法人税法37条)
- 交際費(措法61条の4)
などについては、
個別条文によって損金算入の可否が定められています。
また、最高裁の確定判決がある場合には、
その判断が法的拘束力を持ちます。
通達・下級審の位置づけ
通達は国税庁内部の指針に過ぎず、
納税者に対する法的拘束力はありません。
また、
- 地裁・高裁判決 → 未確定の個別判断
- 通達 → 行政内部の運用基準
に過ぎず、これらのみを根拠として
経費を否認することはできません。
行政機関への拘束(最高裁)
税務署・国税庁を含む行政機関は、
最高裁判決に反する処分を行うことは許されません。
最高裁に反する経費否認は、
違法として取り消しの対象となります。
経費否認の法的結論
業務付随性(法人税法22条3項)を満たす支出について、
これを経費として否認できる根拠は、次のいずれかに限られます。
- 法人税法の各個別条文
- 最高裁の確定判決
経費判断の実務フロー
経費性の判断は、以下の手順で整理されます。
Step1:業務付随性の確認
支出が事業に付随・関連しているかを確認する。
(目的・必要性・関連性)
→ 実体としてビジネスへの貢献があれば、業務付随性を満たす
→ 原則として損金算入
Step2:個別条文・最高裁判決の確認
法人税法の個別条文、または最高裁判決に否認根拠があるかを確認する
→ 根拠がある場合のみ否認可能
→ 根拠がなければ否認不可
Step3:通達・下級審の評価
通達・地裁・高裁判決は参考情報に過ぎない
→ これらのみでは否認根拠として不十分
→ 単独での否認は認められない
税務署が否認できる根拠
税務署が経費を否認できるのは、以下に限られます。
- 法律(法人税法等)の明確な規定
- 最高裁の確定判決
税務署が否認できないもの
以下のもののみを根拠として、経費を否認することはできません。
- 通達
- 地裁・高裁判決
- 税務署の慣行
- 抽象的・主観的判断
結論
経費性とは、
- 法律に基づき
- 個別条文または最高裁判例によって制限され
- 業務付随性(実体)によって判断される
という構造にあります。
そして、
業務付随性を満たす支出について、
法律上の否認規定または最高裁判例が存在しない限り、
その支出を経費として否認する法的根拠は存在しません。